【阿波製紙】窮すれば通ず

2010年8月20日

 *このメールは当社社員が名刺交換をさせて頂いた方、およびメールマガジン
 配信に同意いただいた方へ配信しております。
 *このメールマガジンは、等幅フォントで、ご覧頂くことをお薦めします。

 ◇メールマガジン配信停止を希望される場合は下記URLから手続きを
   お願いいたします。
 →https://reg34.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=leq-mhsg-a3660f94cb3dee55581bcc465bd52521


  ■ AWA PAPER NEWS ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
 ┃                                                                
 ┃       機能紙・不織布の共同開発メーカー 阿波製紙株式会社        
 ┃                    vol.68 【 2010/ 8/ 20 】        
 ┃                                        
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  http://www.awapaper.co.jp/ 
 ┌──┐
 │目次│   
 └┬─┘      
  ├ 01:[ ご 挨 拶] 今月の社長メッセージ
  ├ 02:[二 ュ ー ス] 平成22年度徳島県教育初任者研修を実施
  ├ 03:[シ リ ー ズ] 技術者のエスプリ(第17回:まさかの時代)
  └ 04:[シ リ ー ズ] 水の時代(第13回:新たな水質汚染物質 その3)
 
                       
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■  ご 挨 拶 ■
┃――――――――――――――――――――――――――――――――――
┃  窮すれば通ず
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                                                    取締役社長 三木康弘


 残暑お伺い申し上げます。今年のお盆も、熱気溢れる阿波踊りでエネルギー
を充電しました。

 景気動向は、GDP速報値によると成長鈍化とか、円高、デフレ、赤字財政とい
った言葉が心理的に強く影響し、個人消費や設備投資に二の足を踏ませる様相
が強く感じられます。一番というキャッチフレーズがはやりましたが、どうも
GDPは中国に抜かれ3番手になったようですし、国のトップもいつ誰になるかわ
からない状況が続き、長寿国一番は少し怪しいものの少子高齢化は世界で一番
進んでいます。このようにネガティブな話が日本人は好きなようですが、阿波
踊りは「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損損」と何も考えずに踊り
狂いますから、とてもポジティブになれます。
 
 窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通ずと言いますように、ピンチをチャンス
に変換する行動が常に求められています。厳しい環境下だからこそ、二番底を
心配するより新たな手を打ち出すことが重要と思います。

 当社は、かつてバブル経済の崩壊に加え80円を割る円高などの環境変化に
窮し、1996年にタイ国へ進出し日本のガラパゴス化を実感しました。
 その後国内空洞化と通貨危機を受け更に困窮し、新製品の立ち上げや新市場
の開拓そしてグローバル化への道が開けました。
 今また中国に進出しチャイナスタンダードという新たな市場環境や政治体制
に翻弄されながら、ビジネスモデルを変更し進む道を模索しております。
 海外拠点や提携企業を活用し海外で生産すべきもの、国内に留め世界一を目
指すもの、そしてオンリーワン技術を追求し未来を創出するものを明確にして、
蝉変の如く成長戦略を推進していきたいと思います。
 


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■ 今月のトピックス ■
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 │■ トピックス 1 平成22年度徳島県教育初任者研修を実施
 ├─────────────────────────────────
 │平成22年8月19日(木)
 │ 当社は、8月19日、徳島県立総合教育センターの依頼による「平成22年度
 │ 徳島県教員初任者研修」を実施いたしました。
 │ → http://www.awapaper.co.jp/company/news180.html
 └─────────────────────────────────


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■ シリーズ ~技術者のエスプリ~ ■
┃――――――――――――――――――――――――――――――――――
┃ ~ 第17回:まさかの時代 ~
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                               取締役常務執行役員  濱 義紹
 

 “まさかの時代”という言葉が20年ほど前の高松市で行われた当時堀場製作
所の社長であった堀場雅夫氏の講演の中でとりあげられたことがある。
 日本が経済的大飛躍を遂げた後、いろいろなひずみが各方面で出始め、「
まさかこんなことが」と思われるような出来事が、小事から大事にいたるまで
相次いで起きた時代であった。永遠に続くと思っていたことや当たり前と考え
ていたことが次から次へと覆され、まさかの出来事が日常茶飯事に起きる時代
となっていた。
 国際社会を見れば、1991年12月31日にソビエト連邦の解体というまさかの出
来事により議会制民主主義と資本主義経済が勝利し、21世紀は希望に満ちた平
和で豊かな世界が実現するはずであった。
 しかし、次は2008年10月のサブプライム危機と11月のリーマンショックに端
を発した世界同時不況による実体経済の悪化が露呈した。不況から回復に向け
ての兆しが見え始めた現在、世界の動きが中国を中心とした新興国に向けて動
き始め、長らく続いてきたアメリカ一極集中の覇権時代に幕が引かれようとし
ている。
 政治・経済・文化の三分野で次の世界秩序を構築する覇権勢力は何なのか予
測できない不透明な時代に入っている。
 リーマンショックを境に、世界における日本の相対的立場が急激に低下して
いることを誰もが感じ、流れが新興国に移りつつあることを実感している。
 前例のないこの「まさか」の時代を勝ち抜いていく処方箋を探ってみよう。

【新たなまさかの時代】

 日本のベンチャーの草分けであり、警世のメッセージを発信し続け、京都の
企業の取り組みに対する目利きとなり、我々開発型企業の羅針盤ともいえる前
出の堀場製作所の堀場雅夫氏(現最高顧問)の発言が気になる。
 日経ビジネス2009年9月7日号の「終わらない話・・・価値革命の衝撃」の冒
頭で次のような発言をされている。
「これまでの人生で、今のように先が見えない“不透明感”は初めてである。
戦争にその後の高度経済成長、ニクソンショックや石油ショック、そしてバブ
ル崩壊などいろいろなことがあったが、現在、水面下で進んでいる変化は過去
のどれにも当てはまらない。」
 そしてユニクロやトヨタのプリウスに見られる新たな価値革命に言及し、高
付加価値と顧客や消費者の求める価値にギャップが出始めており、「いいもの
を高く」という考え方が試練の場に立たされており、社会の価値観に対する商
品やサービスの提供が素早くできたところが勝ち残り、その他は淘汰されると
結んでいる。

【日本のまさか】

 歴史が変わるときは「まさか」がつきものであるが、近年でいえば江戸末期
から明治時代に移り変わったときほど激動の時代はなかったであろう。当時の
時代に生きていた人たちにとっては足元を根底から覆されるような地殻変動の
時代であった。当時の人は毎日世の中が変わる「まさか」の連続であったであ
ろう。
 明治維新後の富国強兵策による怒涛のような西洋文化の導入、第二次世界大
戦後のアメリカナイズと日本文化の衰退、バブル崩壊、失われた10年、世界同
時不況などのまさかの連続が現在も続いている。隠れた部分では日本人の代名
詞でもあった律儀と勤勉さはどこかへ置き忘れ、全体がモラトリアム化し、ゆ
とりと言う言葉のもとに「学び」を手抜きし、気がついてみれば日本の立ち位
置が急落しているのだ。今年初めのIMF統計によると、一人当たりのGDPは世界
の16位まで転落し、経済成長率は182ケ国中ワースト21位、GDPギャップは主要
24ヶ国中ワースト1位、消費税率はOECD24ヶ国中最も低くノルウェー、スウェ
ーデンの5分の1、公的債務残高は129ヶ国中ジンバブエに次ぎワースト2位、
インフレ率は182ヶ国中世界ワースト4位で大きなデフレギャップを生じる、
出生率は223ヶ国中ワースト5位で若年層の負担増と国力の低下が懸念される、
株価上昇率は主要40ヶ国中28位、失業率はOECD30ヶ国中ベスト6位、環境パフォ
ーマンス指数は163ヶ国中20位と意外と低く、国際特許出願数のみがアメリカ
に次ぎ世界第2位である。

 このように日本の急激な国力低下という「まさか」がゆで蛙のように進んで
いるのである。
 明治時代は変革に伴う辛いことや悲惨なこともたくさんあったであろうが、
世の中全体は明らかに良い方へ変わっていくという期待がみなぎっていたであ
ろう点が、現在の先が見えない不透明な「まさかの時代」と異なる点だ。

【五郎治殿御始末/ごろうじどのおしまつ】

 江戸末期から明治時代の西南の役にかけての桑名藩の上士の一族が時代に翻
弄される様子を描いた浅田次郎の小説である。
 主人公岩井五郎治は、仕事のない旧藩士を馘首(かくしゅ)する(=首にす
る)という辛い役目を終えたが、次に廃藩置県で桑名藩は三重県になってしま
い、この世から武家そのものがなくなったため、五郎治自身がお役御免となっ
てしまった。
 戊辰戦争では息子をなくしていた五郎治は孫を道連れに心中を図ろうとして
いたところを知り合いの旅籠を営んでいる尾張屋に助けられた。
 孫は尾張屋に預けられ、その後しばらく五郎治は行方不明になっていたが西
南戦争で旧桑名藩士松平定敬公の軍に参加し、戦死したことが伝えられた。
 五郎治は藩の始末をし、家の始末をし、孫の始末もし、自分の身も始末した。
自分の身の始末は命の始末であったと結ばれている。
 この小説のように今の時代には想像できない社会構造の大転換や、家族が引
き裂かれたり、職を失ったり、命に関わるような「まさか」が日本の各地で起
きていたのであろう。

【世界のまさか】
 
 世界の歴史も「まさか」の連続である。ソ連の崩壊による共産主義の終焉、
アメリカ一極集中経済の瓦解、中華人民共和国の経済的大躍進、EU経済圏の誕
生、新興国の台頭、爆発的な人口増等、915テロ、主権国家による拉致事件、
資源争奪紛争、宗教的対立紛争、人種対立紛争など安全な国に住む日本人の常
識では考えられない「まさか」が世界各地で今も起きている。
 最近一番強く感じた「まさか」はアメリカに端を発したサブプライムローン
問題とリーマンショックによる世界同時不況である。
 我々経済素人がいつも一番疑問に思うのが経済評論家のその場その場の発言
で今を評価しているが、どうして今回のような世界を巻き込むような大きな動
きを先読みし、処方箋を準備できなかったのであろうかということである。
 一月ほど前に手に入れたNewsweekの「経済超入門」を読んでこの疑問が解け
た。その下りは以下のようなものである。
「2010年1月初めにジョージア州アトランタで開かれた米国経済学会の年次総
会ではいつもの統計分析は影を潜め、代わりに“自分探し”が幅をきかせてい
た。業界随一の頭脳を誇る数百人のエコノミストが“経済学者は一体何を間違
えたのか”などと情緒的なテーマの分科会を渡り歩いて熱心に耳を傾ける。世
界で屈指のエコノミストでさえ、金融危機を予測できなかったのはなぜか。大
学で教える経済学者も、一から考え直す必要があるのではないか。」

【地球のまさか】

 工場や車の排気ガスによる大気汚染、工場・家庭排水・病院などによる水質
汚染、フロンによるオゾン層破壊、化学物質や炭酸ガスによる地球温暖化、人
口増に伴う必要な場所での水不足、森林破壊によるCO2吸収力の低下と砂漠化の
進行、生物多様性の変化による食物連鎖への影響などいろいろな「まさか」が
地球レベルでも起き続けている。
 しかし、1970年にローマクラブにより警告された「成長の限界」により、30
年以上の歳月を経てやっと世界中が地球の限界を知り、守ろうとする動きが世
界の常識となってきた。
 環境と経済の両立した「持続可能な循環型社会の実現」に向けて動き始めた。
しかし、経済発展レベルの違いにより、自国の権利を守るためのせめぎ合いが
続いており一枚岩とはいえない。
 地球の「まさか」解決とサスティナビリティは、地球にふんだんに存在する
太陽エネルギーと陸上バイオマスと海洋バイオマスと水とシリカの活用とカス
ケード利用に活路を見出していくしかない。

【ナイトの不確実性】

 経済学者フランク・ナイトが1921年に初めてリスクと不確実性を区別した。
 「ランダムに起きる不確実な事象のなかでも統計的・確率的に可能性を推測
できるものをリスクとし、突発的で推測不可能な事象を不確実性として区別し
た。」
 2008年9月の投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻が市場にもたらしたショッ
クはまさにこれに相当するとされている。銀行同士の貸し借りまでが止まって
しまったことはアメリカの財務省やFRB(連邦準備理事会)が想定したリスク
をはるかに超えた「まさか」の領域だったのだ。

【韓国の覚悟】

 1997年のアジア通貨危機により韓国はIMFの管理下におかれていたが、現在
の韓国の成長は、目を見張るものがあり、その韓国が「まさか」の復活と大躍
進を遂げているのである。いまやどん底に落ちた韓国を語る人はいなくなった。
 コンテンツ分野を重視し韓流を世界に広め認めさせ、サムスンをはじめとす
る弱肉強食型の強力企業を、国を挙げて育て上げ、韓国の国際社会における相
対的地位は格段に上がった。この韓国の強みは一体何なのか日経ビジネスより
読み取ってみよう。

「韓国4強躍進の秘密」と題してサムスン、LG、現代、ポスコが取り上げられ
ている。韓国企業の共通点として韓国企業に学ぶ5つのポイントは次のとおり
である。

(1)逆境こそ攻め時    ―― ライバルが引いたときこそ飛躍の好機
(2)悪しき平等を廃す   ―― しがらみ恐れず成長分野に集中
(3)モノ作りより商品作り ―― 技術の押し売りより、顧客が求める商品を
(4)自国に依存せず    ―― 世界市場で戦うことを常に意識
(5)学び、磨き続ける   ―― 優れた手法を貪欲に学び、自分流を作る

 もう一つ韓国の躍進が取り上げられているのは「サムスン最強の秘密-日本
が忘れた弱肉強食経営」である。
 2009年12月期のサムスンの純利益は7300億円で、ソニーが400億円以上の赤
字、パナソニックが1000億円以上の赤字に苦しんだのとは対照的であった。
富士通、三菱電機、シャープ、ソニー、パナソニック、三洋電機、日立製作所、
東芝の日本の電機メーカー9社合わせても1300億円位の純利益なのでいかにサ
ムスンが強いかがうかがえる。
 そして、社員の危機感を煽る総帥イ・ゴンビ会長語録を以下に紹介する。

(1)妻と子供以外は全て変えろ
(2)骨身を削る改革が競争力を高める
(3)水槽にナマズを入れると、ドジョウは食べられまいとして強くなる

 日本の「ワークライフバランス」に比べ、仕事を最優先する「モーレツ社員」
がたくさんいる。豊かな未来を求めて働いたかつての日本の企業戦士に似ている。
 いまやサムスンはソウル大学出身者でも入社は10倍の倍率であるが、成均館
大学の半導体システム学科と携帯電話学科の学生は全員入社できるという専門
学科丸抱えで、国家経済を支えるエリート集団になっている。

 サムスン流人材育成3つのポイントとして次のことが実行されている

(1)経営哲学・核心価値の徹底
   [1]新入社員教育
   [2]先輩社員要請
   [3]夏季修練大会

(2)次世代リーダーの育成
   [1]リーダーシップ専門課程
   [2]プレミア課程
   [3]役員養成

(3)グローバル人材の養成
   [1]海外駐在員要請
   [2]新任法人長課程
   [3]外国語課程

 そして、最後は理念経営を説く

 「人材第一」を理念と核心価値の両方で掲げるサムスンの経営理念は、

(1)事業報国 ―― 企業の存立基盤は国家
(2)人材第一 ―― 企業は人なり
(3)合理追求 ―― 仕事は原則に沿って徹底的に

5つの核心価値(サムスンバリュー)は、

(1)人材第一 ―― 人材が思う存分、能力を発揮できる場を作る
(2)最高志向 ―― 情熱とチャレンジ精神ですべてで世界最高を目指す
(3)変化先導 ―― 変わらなければいけないという危機感で変化を起こす
(4)正道経営 ―― 真直ぐな心と真実で、名誉を守り、正道を追求する
(5)相性追求 ―― 社会とともに生きる。地域、国家、人類と一緒に繁栄する

【未来を考える】

 「テクノロジストが企業と社会を変える」という2003年のピーター・F・ド
ラッカー氏(社会生態学者)へのインタビュー記事だが、いまだ新鮮である。
 先進国を襲う2つの大きな試練がある。とりわけ日本にとって大きな社会変
化が起きているのは人類がかつて経験したことがない人口減少と単純労働が中
国や東南アジアに移り労働の質が変わってきたことである。
 第4の情報革命の中で主役に躍り出るのは「ナレッジワーカー」であると当
初規定していたが、さらに進化させ、職を全うする知識労働者をテクノロジス
トとした。
 これからの日本は「出世を望まず専門を愛するテクノロジストの時代に」な
り、組織運営と経営のあり方が変わってくることを予測している。
 未来がどのようになるのかいつの時代にも誰しも気になるものである。ピー
ター・F・ドラッカー以外のものをご紹介しておく。

・「百年後の日本」『日本及日本人』春季臨時増刊号 1920年 政教社
・ 日経ビジネス 2010年1月4日号 「1920 日本人の未来力」日経BP社
・ 週刊ダイヤモンド 2009・2010年 12月26日・1月2日号 
  「未来年表 2010⇒2050年何が起きるか」 ダイヤモンド社 
・「応用物理学会分野のアカデミック・ロードマップの作成 報告書」 
                     2008年3月 社団法人応用物理学会
・「ネクスト・ソサイエティ」ピーター・F・ドラッカー 
                        2002年 ダイヤモンド社
・「明日を支配するもの」ピーター・F・ドラッカー 1999年 ダイヤモンド社

【ドラッカーのつぼ】

 大人気経営学者のドラッカーがこれだけもてはやされるには他の経営学者と
決定的に違う点がある筈だが、何故すばらしいのかよく理解できていなかった。
 ドラッカーに関しては「ドラッカーはこのように言っている」などと無条件
に認めている人が多いため「アメリカでは・・・」、「北欧の福祉政策は・・
・」というような西欧かぶれ的、権威的、経済教的な臭いを感じることが多か
ったため経済素人にとっては納得ができていなかった。
 しかし、東京大学東洋文化研究所の安富歩教授のドラッカー論でドラッカー
の「つぼ」を理解した。
 安富教授によると経営学者ピーター・F・ドラッカーは経済についてまともな
思考を展開した稀有な学者であり、それゆえ「アカデミズム」の経済学者には
まったく相手にされず、創始者の一人である「経営学」でさえ彼になるべく言
及しないようにしているのが実態だと解説している。
 ドラッカー経営学の根幹は次の3点にまとめることができる。この3つを実行
すれば(簡単なことではないが)個人は組織の要請に、組織は社会の要請に創
造的に応え生き延びることができる。

(1)自分の行為の影響のすべてを注意深く観察せよ
(2)人の伝えようとしていることを聞け
(3)自分のあり方を改めよ

 そして、マネジメントはマーケティングとイノベーションから構成されてい
るとする。
 上記(1)と(2)がマーケティングで(3)がイノベーションである。

 マーケティング論についてわかりやすく解説している。「市場」というもの
が企業の外部に確固として存在し、その状況を天気を眺めるように調査すると
いう発想が間違っている。
 企業の環境はコミュニケーションでできており、自分に求められていること
を理解するのがマーケティング活動である。
 そして、重要なマーケティング資源はトラブルである。トラブルとは組織が
社会の要請にうまく対応できていないということを意味している。
 トラブルに正面から向き合うことがイノベーションのカギを与えてくれると
いう理論である。それゆえ、トラブルを隠蔽する組織に将来はないと。
 イノベーションとは技術開発でなく「自分を変えること」がイノベーション
の本質だと説いている。

【市場調査からモニタリングの時代へ】
 
 ピーター・F・ドラッカーの「明日を支配するもの」の中で「今日ではあら
ゆる組織が変化に伴うリスクを軽減するために、あらゆる種類の市場調査をお
こなっている。だが、まったく新しいものについて市場調査をおこなうことは
できない」とある。
 アメリカの前例に倣ってあらゆる工業製品を造ってきたわが国にとって、真
似をする対象が無くなってから久しい。中小・中堅企業といえども、真に新し
いものをつくるためにはモニタリングを必要とする新たな「ものづくり」の時
代に入ったのではないか。


《引用文献》
 ・日経ビジネス  2009年9月7日号「終わらない話・価値観革命の衝撃」
                                 日経BP社
 ・日経ビジネス 2010年1月25日号「韓国4強躍進の秘密」  日経BP社
 ・日経ビジネス 2010年7月5日号「サムスン 最強の秘密」 日経BP社
 ・日経ビジネス 特別編集版「ピーター・ドラッカー未来企業を語る」 
                           2003年4月 日経BP社
 ・日経ビジネス 「日本を救う夢の技術」 2010年1月4日  日経BP社
 ・週刊ダイヤモンド 2009年6月20日号 コラム「3分間ドラッカー」
                          ダイヤモンド社
 ・週刊ダイヤモンド 2010年3月27日号 決定版「経済入門」  
                          ダイヤモンド社
 ・週刊東洋経済 2010年4月24日特大号「経済超入門」 東洋経済新報社
 ・ニューズウィーク日本版ペーパーバックス  「経済超入門 ゼロから
    わかる経済学&世界経済の今」2010年6月 阪急コミュニケーションズ
 ・「その先が読めるビジネス年表」日本の論点編集部 2009年6月 文芸春秋
 ・講談社現代新書「死語コレクション」水原明人 1996年5月 講談社 
 ・新潮文庫「五郎治殿御始末」浅田次郎 2009年5月 新潮社



┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ■ シリーズ ~水の時代~ ■
┃――――――――――――――――――――――――――――――――――
┃  ~ 第13回:新たな水質汚染物質 その3  ~
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                               取締役常務執行役員  濱 義紹


 本格的な水の時代を迎えていることを多くの人が実感し始めている。分析技
術の飛躍的向上の結果、前回までのその1、その2で工業製品、窒素・燃料由
来物質、農薬、家庭用品、香料、天然由来物質、食品添加物、下水由来の医薬
品、女性ホルモンなどが新たな水質汚染物質として確認されていることを述べ
た。
 今回は、さらにフッ素系界面活性剤と耐塩素性病原微生物について述べ、「
新たな水質汚染物質」については今回で完了する。

【フッ素系界面活性剤による水環境汚染】

(1)フッ素汚染の現状
 安定で非常に便利な特性を持ち、他の物質では代替が難しいフッ素化合物は
 一度環境中に放出されると長期にわたって残留し、その環境レベルは容易に
 下がらない。
 環境残留性に加えて生物濃縮性も高く、毒性も有することが明らかになって
 きた。

(2)フッ素系界面活性剤の種類 PFOS/PFOA
 フッ素系界面活性剤の主なものは次の三種類である
 [1]末端にスルホン酸をもつもの
 [2]末端にカルボン酸をもつもの
 [3]末端がアルコールでその隣接炭素がフッ素化ではなく水素化されたもの

 [1]と[2]の代表例としてPFOS、PFOA以外にPFNA、PFDA、PFuDA、PFdDA
  があり半導体、衣類、テフロン加工製品、泡消火剤、傘などに使用されて
  いる。

(3)コーティング用途のフッ素
  コーティング目的の場合、[1]、[2]、[3]の処理はそれぞれ異な
  るがアミド化したりアルキル鎖と結合変性させたり、モノマーユニットと
  結合させたうえで通常のアルキル基ユニットと共重合させて高分子化し、
  衣類などの表面に塗布、噴霧して使用する場合が多い。
  食品包装紙の場合はリン酸エステルタイプが米国食品医薬品局(FDA)の許
  可を受けて使われている。これらの高分子タイプは長期にわたる使用の間
  に少しずつ分解し、フッ素系界面活性剤やその低分子誘導体を環境中に放
  出している。
  家庭用エアロゾルタイプの撥水剤やテフロン加工製品やテフロンコーティ
  ング剤などからも、使用にともないフッ素系界面活性剤の放出が起きてい
  る。

(4)米国の動き 
  フッ素系界面活性剤はその便利な特性から半世紀にわたって使用され用途
  も生産量も拡大してきたが、3Mの工場労働者血液中のPFOSレベルが動物実
  験の最少発現レベルに近づいていることと比較対象として一般人の血液検
  査をおこなったところ、10ng/mlを超える濃度のPFOSが検出されたことから、
  2000年に3M社はPFOS生産中止を宣言した。

(5)国内の汚染状況
  全国の主要河川126地点、海水16ヶ所のPFOS分析結果が報告されている。
  陸水で0.3~157ng/L、海水で0.2~25.2ng/L、最高値は多摩川の下水処理場
  付近で157ng/Lであった。
  さらにPFOAを含めて地域別に整理された結果ではPFOS、PFOA共に大都市の
  集中する関東と近畿地方で高い値が報告されている。
  近畿のPFOA濃度の高い地点は摂津市周辺に多く安威川で67,000 ng/Lが検出
  された。
  その後、摂津市周辺の調査はさらに進み、発生源と目されるフッ素化学工
  場周辺の表流水、地下水の汚染実態が報告されている。
  関東では多摩川の下水処理場の放流水中に1,000 ng/L前後のPFOSが検出さ
  れた。
  汚染源の一つとして電子部品工場が見つかっている。
  これら大口の利用者や業界の努力によりここ1~2年の間に濃度レベルは減
  少してきており、使用・排出の削減が図られていることがわかる。

(6)水域汚染
  自然環境の中では水に一部とけるPFOSなどのフッ素系界面活性剤が水に溶
  けて移動拡散し生物に濃縮されていく様子が観察されている。
  ニジマスの飼育実験では炭素鎖の長さが一つ伸びるごとに約8倍ずつ濃縮
  係数が上がると報告されている。
  実際の沿岸調査によると、二枚貝の体内ではPFOSでは800倍、PFOAで8倍
  濃縮されていることが報告されている。

(7)陸域汚染
  陸域の生物モニタリングによる汚染分布報告は少なく、指標生物として肉
  食性の昆虫に人血中と同等レベルのフッ素系界面活性剤が蓄積されている
  ことを見出し、調査が始まったばかりであるようだが、その分布は水域の
  二枚貝の汚染分布によく似ている。PFOSでは関東、近畿、北陸で高い濃度
  を示している。

(8)汚染抑制対策と処理技術
  発生源の製造工場の工場排水やこれらを受け入れる下水処理場放流水が河
  川や沿岸域汚染の原因であることが明らかになってきたが、PFOSの条約追
  加審議やフッ素系界面活性剤の汚染問題が注目を浴びたことにより、業界
  で排出削減による汚染抑制対策が図られている。製造工程などの高濃度排
  水については活性炭処理が有効である。高濃度廃液や残存物質の処理方法
  としては光分解の検討が進められている。
  すでに埋め立てられた廃棄物処分場からの放出は今後も長期にわたって放
  出されることが予測されるため、その実態の把握と比較的低濃度の廃液を
  安価に処理できる技術開発が今後の課題である。

【耐塩素性病原微生物としての病原原虫】

(1)耐塩素性病原微生物
  水系感染症の原因となる病原微生物は病原原虫、病原細菌、病原ウイルス
  がある。古くから衛生指標として活用されてきた大腸菌は多くの病原細菌
  に比べて塩素耐性が相対的に強い。我が国の水道水で問題となる耐塩素性
  微生物というのは大腸菌よりも塩素耐性が強い微生物を意味することにな
  る。
  多くのウイルスや芽胞菌の類は大腸菌よりも塩素耐性が強いが、その違い
  は数倍から数十倍程度であり、現実には塩素注入量を増やすことにより対
  応可能な範囲である。

(2)塩素の効かない微生物
  塩素が持つ消毒力と配水管中での殺菌持続力のおかげで安全な水道水が確
  保されてきたが、近年塩素が効かない微生物がにわかに注目されてきた。
  その代表格が1993年に米国ウィスコンシン州で、1996年に埼玉県越生市で
  集団感染を起こしたクリプトスポリジウムという病原原虫である。

(3)病原原虫
  ジアルジアやクリプトスポリジウムなどの病原原虫は、環境水中や浄水場
  の処理工程では厚い外殻に覆われたシストやオーシストの状態で存在する
  ため、塩素耐性は大腸菌の数千倍から数万倍となることが報告されている。
  したがって、塩素投入量を増やすことによる対応は実用上不可能である。
  オーシストは人体中でスポロゾイト(感染体)を排出し重篤な下痢症状を
  引きおこす。

(4)病原微生物除去
  1996年に発生した埼玉県越生市の集団感染以後、「水道におけるクリプト
  スポリジウム暫定対策指針」が出され、主要な除去方法として「ろ過処理」
  の方針が出された。比較的大きな微生物サイズであるクリプトスポリジウム
 (数μm粒子)をろ過処理で十分除去せよとの指示であった。

(5)膜濾過法
  従来の砂濾過法に比べて阻止可能な粒子径を厳密にコントロールできる膜
  濾過法が注目された。財団法人水道技術研究センターの報告によると、20
  08年末までに導入された膜濾過装置(MFおよびUF)の総件数は676件に
  達している。導入内訳は、全体の70%が1000t/日の小規模施設である。
  微生物除去の場合、除去率は99.99%とか99.999%とか限りなく100%に近
  い数値が要求される。クリプトスポリジウムを例に取れば、5μm以上の孔
  が0.1%でも存在してはならない。厳密な製品管理が製造者に求められるの
  である。
  中空糸膜装置では、洗浄中の振動や原水中の固形物による損傷が問題となる。
  1000本に1本が破損すれば除去率は装置全体として99.9%となり微生物除去
  という観点からは無視できない。損傷や破損をいち早く検知できることが
  必要となる。

(6)紫外線照射法
  近年、紫外線照射によるクリプトスポリジウムへの対応が注目されている。
  260nm付近の紫外光は生物の細胞内の核酸(DNAまたはRNA)に作用し複製を
  阻害し細胞分裂ができなくしてしまうのだ。
  今までは、ジアルジアやクリプトスポリジウムのオーシストに対しては効果
  が非常に低いとされてきた。

(7)クリプトスポリジウムへの劇的効果
  ところが10年ほど前にクリプトスポリジウムの感染力の有無を実験室で確認
  できる簡易な方法が開発され、紫外線によるクリプトスポリジウムへの効果
  が確認され、感染力を劇的に低下させる効果があることがわかった。
  このようなことから、北米においては紫外線照射処理が水処理に導入される
  件数が飛躍的に増えている。
  設備においても配管の一部を紫外線装置に置き換えるだけであるし、運転管
  理においても、ランプの点灯確認が主になり、遠隔操作ができるなど利点が
  多いのでクリプトスポリジウム対策として急速に拡大している。
  最大の問題は装置の合格基準が難しいという点にある。クリプトスポリジウ
  ム等対策指針には「処理対象水の95%以上に10mJ/cm2を保証する」と定めら
  れており、この照射線量値はクリプトスポリジウムの99.9~99.99%の不活
  性化が可能とされている値である。
  クリプトスポリジウム対策として「膜濾過法」と「紫外線照射」の導入が進
  められているが、水道水事故を未然防止するための最終バリアとしての浄水
  処理の担うべき責務は大きい。

 
《引用文献》
 ・Ohm MOOK No.76 水と水技術No.3  
     特集1「新たな水質汚染物質とその実態」 オーム社
 

  最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。
  ご質問、ご感想などを下記にお寄せいただけましたら幸いです。



  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ■ 発 行:阿波製紙株式会社 http://www.awapaper.co.jp/
  ■ 連絡先:770-0005 徳島市南矢三町3丁目10-18
        Tel:088-631-8229 Fax:088-632-0079
  ■ E-mail: tech@awapaper.co.jp
       ご意見・お問合せはこちらまでお願い致します
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   Copyright 2010 Awa Paper Mfg. Co.,Ltd. All Rights Reserved.
		  

メールマガジンバックナンバー

ページのトップへ